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10min.

 

 苦しくて、苦しくて、息ができない。

 朝、目が覚めた時、もしかしたらこのまま死んでしまうんじゃないか、って思う時がある。
 苦しくて―――あれも、これも、考えれば考えるだけ、苦しくて。このまま、息が止まって死んでしまうんじゃないか、って思う時がある。

 誰か助けて、と心の中で叫ぶ時、脳裏に浮かぶのは、何故かいつも、名前も知らないあの人の顔だった。

 お願い、助けて。助けて下さい。

 私は、
 このぎゅうぎゅうづめの世の中で、
 今にも窒息して、死んでしまいそうなんです―――。


***


 いつもより10秒ほど遅れて、電車が構内に滑り込む。その僅かの遅れに気づく乗客は、誰もいなかった。
 前から3両目の、真ん中のドア。永遠子(とわこ)は、後ろから来るサラリーマンに押されながら、車内へとよろけるように押し込まれた。背後のサラリーマンの背広の裾を挟みそうになりながら、忙しなくドアが閉まる。なんだか今日は、誰も彼もが忙しくしている感じだ。
 車内は、適度に混んでいる。一応、立つ場所を選ぶ程度には。けれど、永遠子は迷わず、進行方向左側のドアの傍を選ぶ。3つ先の駅で降りるのに便利なのと―――もう1つ、理由があった。

 ドアにもたれかかって、窓の外を眺めている、男の人。
 ―――いた。
 乗る電車を決めていないのか、不規則な仕事をしているのか、毎日必ずそこにいる訳ではない。運が悪いと3日位姿を見せない時もある。だから、その姿をそこに見つけると、ホッと安堵する。彼の顔が見える位置に居場所を見つけた永遠子は、一時、憂鬱な気分も忘れて彼の方を見つめた。

 彼を最初に見かけたのは、高校に入って間もない頃。
 その時の彼は、永遠子のすぐ隣で、時々ドアのガラスに頭をぶつけながら、立ったままうたた寝していた。
 ゴツン、といっては、驚いたように半分瞼を上げ、でもすぐに電車の揺れに促されるように眠りに入ってしまう。永遠子が降りるまで、ずっとその繰り返し。永遠子が降りる駅ではこちら側のドアが開くので、その日最後に見た彼の姿は、うっかり涎を垂らしてはいないかと慌ててるみたいに、バツが悪そうに口元を拳で拭っている姿だった。
 多分、永遠子よりずっと、大人の人。でも、そのユーモラスな姿に、つい笑ってしまった。
 以来、彼は、時々永遠子と電車が一緒になる。永遠子は、何両目のどの辺りに乗るかを決めているタイプだが、どうやら彼もそうらしい。することも特にない、電車の中での10分間―――永遠子は、なんとなく、彼を観察するのが習慣になった。
 彼について、いろいろ考える。
 いつもスーツ姿だから、会社員かな、とか。歳、いくつ位だろう、とか。多分20代前半だと思うけど、今時全然脱色も染めてもいない髪って珍しいな、とか。若く見えるけど、実は結婚してるんだったりして…、とか。
 特別見苦しい訳でもないけど、特別ハンサムな訳でもない。標準か、ちょっとだけ上位。シャープな顔立ちはしてるけど、起きてすぐ家を飛び出してくるのか、永遠子が見かける彼はいつも眠そうだ。でも、ちょっと眠そうなその顔が、親しみが持てて、なんだか見ていてホッとする。
 気づけば永遠子は、朝の電車で彼の姿を見るのが、密かな楽しみになっていた。
 やっぱり、こういうのも、恋って呼ぶのかな―――2学期も残すところあと僅かとなった今、永遠子は、そんな風に感じている。

 あっという間に、電車は2つの駅を通過し、永遠子が降りる駅に停車した。
 心和む時間は、ほんの僅かで終わってしまう。制服の肩越しに振り返った永遠子は、あらぬ方向を向いている彼の横顔に、引き止めてくれないかな、なんて、あり得ないことを思った。

 ―――学校に、行きたくない。

 電車のドアが閉まると同時に、永遠子の表情が、目に見えて曇った。

***

 永遠子の高校生活は、いたって静かなものだった。
 静か過ぎる、と言ってもいいかもしれない。というより、健全な高校生活に必要とされる最低限の会話すらない、と言うのが一番正しい。
 登校してから帰宅するまでの間、永遠子が声を出すのは、授業で当てられた時と、音楽の授業で歌を歌う時だけだ。極たまに、事務的な用事でクラスメイトと言葉を交わすこともあるが、それも二言三言で終わってしまう。

 「数学の山岸、チョーうざくない?」
 「だよねー。授業中は携帯禁止! だって。何熱血センセーぶってんだろ。やだやだ」
 「バカじゃないの。今時そんなの、どの先生も黙認してんじゃん」
 「ああいうのに限ってさあ、実はこっそり、出会い系とかにはまって、携帯代が10万とかいってんじゃない? あいつ、独身だし」
 「あり得るぅ。実は女子高生買ってたりして」
 「あはははは」
 ちなみに、この高校は、携帯電話の持ち込みは校則で禁止になっている。どうしても持ち込まざるを得ない事情がある場合、学校内では電源を切ることも併記されている。
 永遠子は、携帯電話を持っていない。すぐ前の席にいる友達に、授業中、携帯でメールを送っている子が何人もいるが、1メートルも離れてない所に何故メールを送るのか、その理由が永遠子には全然分からない。しかもその内容が「授業、かったるいね〜」という程度の内容なのだから、余計理解できない。
 でも、もっと理解できないのは、そういう彼女たちを見て見ぬふりしている、教師たちの方だ。

 「佐伯」
 後ろの席の会話に気をとられていたら、前のドアから顔を覗かせた担任が、永遠子の名を呼んだ。
 「はい」
 「悪いが、お前、日直だろう? 次の授業で使う資料運ぶの、ちょっと手伝ってくれないか」
 「…はい、分かりました」
 確かに日直だし、次は担任の授業だ。世界史なので、年表や地図など使う資料も結構大きいので、手助けが必要なのは確かだろう。カタン、と席を立つ時、背後から視線を感じた。けれど、永遠子はそれに振り向くことはせず、黙って教室を出た。
 「すまんな、せっかくの昼休みに」
 少し申し訳なさそうにする担任に、
 「いえ、構いません」
 と永遠子は返した。そして、先に立って歩き出した担任の後に続いて、廊下を歩き出した。

 「―――“いえ、構いません”だって」
 「優等生ぶっちゃってるよね」
 永遠子が教室を出てすぐ、後ろで騒いでいたグループが、そんなことを言い合っているのが聞こえた。
 まだ、ガラス戸1枚挟んだだけの廊下に永遠子がいるのに、そんなことは想像もつかないのか。それとも、聞こえてもかまわないと思って―――いや、むしろ、聞こえることを承知で話しているのか。
 「まあ、いいんじゃない。あの子、昼休みったって、誰と話する訳でもないしー」
 「だよね。かえって喜んでるんじゃない? あの子、先生たちとの方が気が合いそうじゃない」
 「あはは、言えてるー」

 永遠子は、気にしなかった。

 いや。
 気にしないようにしよう―――と、思った。

 

 これでも、入学した最初の頃は、永遠子にも一応、友達になれそうなクラスメイトが2人ほどいた。
 と言っても、どんどんグループが出来ていく中で、ぽつんと余ってしまった人間が、恐る恐る歩み寄ったに過ぎないのだから、友達になれそう、というより、必要に迫られてそうなった、という感じだった。
 その2人も、やはり携帯電話を持っていた。ただ1人、持っていない永遠子に、「佐伯さんも買いなよ」と彼女らは言ったが、永遠子は「親が反対してるから」と言って、曖昧な笑みで誤魔化した。
 「固定電話って、本人が出るとは限らないから、電話し難いじゃない。ね、頑張って、親を説得してみてよ」
 執拗に携帯購入を迫る彼女らに、永遠子は「なんで毎日会ってるのに電話する用事があるの?」と訊ねたかったが、訊ねられなかった。そんなことを言ったら、友達なのに用事がなきゃ電話もできないの? と嫌われてしまう気がして、とても口にできなかったのだ。
 でも、そんな心配、する必要もなかった。
 永遠子が2人から距離を置かれる事件は、そんな話をして間もなく、起きたから。

 授業中、携帯メールを交換していた2人のうち片方が、それを教師に見咎められて、携帯を取り上げられた。
 反省文を書き、翌日にはちゃんと返してもらえたが、返してもらった際彼女は、そこが職員室であることも忘れたみたいに、その場で即座にメールチェックを始めたのだ。そして、2通という僅かな数ながらも、自分が手放していた間にメールが来ていたことに、酷く喜び、安堵していた。半泣きになっている彼女を見て、ああ、あの子にとっては、携帯電話って泣くほど大事なものなんだな、と、永遠子はその時思った。
 そう、思ったから。
 翌日、また授業中に携帯を取り出して机の下でメールを打ってる彼女を見て、言わずにはいられなかったのだ。
 「ねえ、授業中にやるの、やめたら? また没収されちゃうよ?」
 授業の後、こっそりそう言う永遠子に、彼女は、あからさまに嫌な顔をした。
 「だって、メールが来たら、すぐに返事返さないと失礼じゃない。あたしから送ってる訳じゃないよ? メールが来るから、返事してるだけだもん」
 「でも、校内では電源切っとく校則になってるよね。電源切ってれば、メールが来ても分からないんじゃない?」
 「何それ。ますます失礼じゃない。朝1番で送られてきたメールに、夕方まで返事しないなんて。相手の子、絶対怒っちゃうよっ」
 「没収されたら、丸一日、何も出来なくなっちゃうよ?」
 「……」
 「先生も、次見つけたらもう返さない、って言ってたじゃない。ね、せめて授業の間だけ、携帯出すのやめとこうよ。休み時間に返事すればいいじゃない」

 永遠子としては、また彼女が携帯を取り上げられてしまったら、と心配したからこその、忠告だった。泣いた顔も、必死にメールチェックしてる姿も見たから、そう思ったのだ。
 しかし、彼女はそうは思わなかったらしい。
 翌日から、2人の態度は、明らかに変わった。永遠子をのけものにするようになったのだ。
 話しかけると、気のない返事で誤魔化して、すぐに自分たち2人にしか分からないような話題にしてしまう。昼休みの昼食も、購買に行ったまま戻ってこない。永遠子はお弁当持参派なので、彼女らが帰ってくるまで、じっと待っているしかなかったが、彼女らが帰ってきたのは、昼休みの終わるギリギリの時間―――屋上で食べてきた、と言われて、さすがの永遠子も文句を言いたくなった。
 そんな日が数日続いた段階で、永遠子の方から、彼女らから離れた。
 掃除の時間に、偶然、2人が話していることを聞いてしまったのだ。

 「佐伯さん、自分が携帯持ってないもんだから、ひがんでるんじゃない?」
 「多分そうだよ。先生に携帯取り上げられた時も、やった、これで仲間が増える! って喜んでたりして」

 そういう話は、2人の間だけの話であっても、どこかから自然に広まってしまうものだ。
 いつの間にか永遠子は、クラス中の女子生徒から、そういう目で見られ、無視されるようになった。ネグレクトという名の、一種のいじめである。

 ―――学校に、行きたくない。

 この頃から、永遠子は毎朝、目を覚ますのが憂鬱になった。

 

 いつもと変わらない、気詰まりな1日を終えて帰宅すると、珍しく、兄が既に帰ってきていた。
 「よ。お帰り、永遠子」
 「珍しいね、お兄ちゃんが先に帰ってるなんて」
 「図書室が、本の入れ替え作業だか何だかで、閉鎖されちゃってさ。早々に追い出されちまったんだよ」
 2つ違いの兄の顔は、冬だというのに黒く日焼けしている。陸上選手なので、年がら年中外で練習に明け暮れ、この健康的な小麦色が普段の肌の色になってしまったのだ。
 その兄も、今は部活をしていない。高3の12月―――まさに、受験の追い込みの時期に入っているのだから。
 「どう? 志望校、受かりそう?」
 「まあな。模試の結果はまずまずだし」
 そう言って笑うと、兄は、飲みかけだったココアを一気に飲み干し、立ち上がった。
 「よっしゃ。そろそろ、やるか」

 去年の今頃の兄は、大学受験は辞める、と言って、両親と喧嘩になっていた。
 最近の兄は、もう、何も言わない。3年に進級した時点ですっぱり陸上を辞め、受験校も1校に絞って、日々受験勉強に没頭している。1校しか受けないから、落ちる訳にはいかないのだ。
 兄は元々、努力家だ。こうと決めれば、必ずやり遂げる。大学受験も、きっと受かるだろう。

 ―――お兄ちゃんは、偉いなぁ…。
 私は、何も、頑張れない。

 今の兄の姿は、ちょうど去年の受験直前の自分の姿と重なる。
 自分も、頑張った。
 でも…もう、頑張る気力がない。

 苦しくて。苦しくて。
 学校の中でも、家の中でも、苦しくて。
 でも、この苦しさを、誰にも言えない―――永遠子はため息をそっと飲み込むと、自分の部屋へと向かった。

***

 その日の朝は、あの彼に、会えなかった。
 ちょっと失望しながらの通学は、決して初めてのことではないのに、妙に気が重かった。やたら、体が重い―――風邪でもひいたのかな、と、永遠子は、コートの上から腕の辺りをさすった。
 クリスマスも10日後に迫り、世間は赤と緑のイルミネーションに彩られている。が、学校の中は、相変わらずの灰色だった。1日中、必要最低限の会話しかない日常が続く。けれどこの日は、口をきかずに済むことがありがたい程だった。だるくてだるくて、気を遣いながら喋るのも面倒な気分だったのだ。
 風紀委員(一部の女子生徒の“強い推薦”で、やらされてしまった委員だ)の委員会が放課後にあり、永遠子も出席したが、その間も、朝感じただるさは一向に変わらない。むしろ、どんどん酷くなる一方だった。
 「あの…、すみません」
 委員会の途中、永遠子は我慢できず、立ち上がった。
 「気分が、悪くて…。すみません、早退してもいいですか?」
 実際、永遠子の顔色は、あまり良くなかったのだろう。委員会担当の教師も、同じクラスの男子の風紀委員も、心配そうな顔で永遠子の早退を了承してくれた。他の委員にも何度も頭を下げながら、永遠子は委員会を後にした。
 ―――やだ。早退したとこ、他の子たちに見られたら、陰で何て言われるか分からない…。
 今日、風紀委員があることは、みんな知っている。そして、永遠子が風紀委員であることも、みんな知っている。早退を許されてホッとする一方で、永遠子は「他のクラスメイトにもし見られたら」という妙な焦燥感に駆られ、人影もまばらになり始めた廊下を、鞄を抱えるようにして急いだ。

 ―――なんか、疲れた。
 帰りの電車に揺られながら、窓の外をぼんやり眺める。早くも薄暗くなっている町並みは、何故か酷く遠い世界のように見えた。そんな風景を眺めながら、永遠子はなんとなく、朝見かけるスーツ姿の彼のことを思った。
 あの人でも、こんな風に全てが嫌になってしまうこととか、自分なんか消えてなくなっちゃえばいいんだ、なんて思うことがあるんだろうか。
 多かれ少なかれ、誰だってそんな事を思って生きているのだと、そう永遠子は思っている。自分だけが不幸だとか、自分だけが割り食ってるとか、そんなヒロイズムに浸るほど子供でもなければ妄想傾向でもない。平気な顔してる人それぞれが、やっぱり何がしかのものを抱えて、それでも普通に生きてるんだ―――そう思っている。
 だからこそ、こんなこと位で、手足を縮めてしまう自分が、嫌い。
 嫌いなのに、嫌いな自分から生まれ変わることができないから…余計、苦しくなってしまう。永遠子の生きられる世界は、日々、どんどんその範囲を狭めていき、今にも窒息しそうなほど狭い空間しかもう残されていない。
 …なんか、本当に、疲れた。
 そろそろ限界なのかもしれない―――窓の外に見える景色が、ぼんやりと滲んだ気がした。

 『次は、終点……』

 「―――…っ」
 車内アナウンスの声に、永遠子は、ハッと我に返った。
 終点は、永遠子の家がある駅より、3つも先の駅だ。慌てて、周囲を見渡し、窓の外を確認する。結構な人数いた乗客も、すっかりその数を減らし、空いている車内で立っているのは永遠子1人になっていた。窓の外の景色も、薄暗くて分かり難いが、確かに見慣れない景色だ。多分、終点の駅の周りの景色なのだろう。
 ぼんやりしている内に、降り損ねていたらしい。バツの悪い思いをしながら、永遠子は、回送車になってしまうというその電車を、終点の駅で電車を降りた。
 ホームの反対側には、既に、上り電車が停まっている。これに乗れば済む話なのだが…。
 ―――喉、渇いたな…。
 それに、こんな気分を引きずって家に帰るのも嫌だった。永遠子は、鞄から財布を取り出し、定期券の区間との差額を払って、終点の駅の改札をくぐった。


 この辺りに来るのは、初めてかもしれない。
 父の車に乗って、駅の近所を通ったことはあるかもしれないが、電車を終点まで乗ったことは一度もない。でも、永遠子の家のある駅の周囲と、その風景はさして変わりはなかった。住宅街にある普通の駅。スーパーが近所にあることや、コンビニが併設されているところまで一緒だ。
 コンビニに入って、ミネラルウォーターを1本買った永遠子は、その袋を提げて、何となく店内をうろついていた。そして、出入り口にほど近い商品棚の一角に、あるものを発見した。
 ―――あ、可愛い。
 それは、女の子の間で人気のキャラクターがついた、携帯電話のストラップだった。
 普段、このキャラクターでは見かけないような、キラキラしたメタル素材のチャームがついたストラップだった。このコンビニチェーン限定の商品らしく、置いてある数も少ないらしい。
 そう言えば、限定品ストラップを自慢してるクラスメイトがいたな、なんてことを考えながら、永遠子は暫し、そのストラップを、ぼんやり見ていた。
 見ているうちに―――なんだか、胸の辺りが、苦しくなった。

 この時、永遠子がどんな精神状態に陥ったのか、永遠子本人にも、よく分からない。
 別に、このストラップが欲しかった訳じゃない。欲しかったとしても、この程度のお金なら、十分払える範囲内だった。だから、この後、自分がとった行動の理由が何なのか、永遠子自身、よく分かっていなかった。

 何かに導かれるみたいに、一番手前のストラップに、手を伸ばす。
 薄紫色したそれを1つ、手に取ると、永遠子は、まるで誰かに操られているかのように、それをコートのポケットに押し込んだ。
 いや。
 押し込もうとした。

 「!!」
 がしっ、と手首を掴まれ、夢遊病状態に陥っていた永遠子は、一気に我に返った。
 ストラップを握り締めた手を、誰かが掴んでいる。その手は、あと少しで、コートのポケットの中へと潜り込む寸前だった。
 ―――わ…私、何、しようと、してたの?
 パニックに陥りながらも、顔を上げる。そして、自分の手首を握っている人物の顔を確認した途端―――永遠子の心臓は、ドキン、と大きく脈打って、凍りついた。


 ―――ど…どうして―――…?


 怒ったような、憤ったような顔をしてそこに立っていたのは、トレーナーにGパンというラフな服装をした、20代とおぼしき男性。
 その顔は、間違いないく―――電車で見かける、あの“彼”、だったのだ。


***


 「―――落ち着いた?」
 少し心配げに、彼が訊ねる。永遠子は、俯いた顔を上げることも出来ず、再びしゃくりあげながら、首を横に振った。
 「じゃあ、もうちょっと、水飲んで。…ホラ」
 永遠子が買ったペットボトルのキャップをあけて、再度渡す。それを受け取って、永遠子は無言のまま、それを口に運んだ。

 あの後、彼は、永遠子の手からストラップを毟り取ると、レジに行ってそれを買ってしまった。
 顔色を失って愕然としている永遠子は、彼に差し出された小さな袋を、とても受け取れる状態にはない。そんな永遠子を、彼は、駅の待合室のベンチまで連れてきたのだ。
 気づけば、泣き出していた。
 恥ずかしさと、後悔と、恐怖と―――いろんな感情がぐちゃぐちゃに混ざり合って、自分でも何を考えているのか、全然分からない。どうして、どうして、どうして…。何度も自問を繰り返すけれど、何が“どうして”なのかすらも、分からなかった。
 突然の出来事に、これまで我慢し続けていたものが、一気に決壊する。永遠子は、こんなに泣くのは何年ぶりだろう、という位、激しく泣いた。その間、彼はずっと、永遠子の隣に黙ってついていてくれた。

 「…君ってさ。朝、電車でよく会う子だよね」
 永遠子の涙がやっと収まった辺りで、彼は唐突に、そう切り出した。
 驚いて顔を上げると、彼は、困ったような笑顔を見せて、頭を乱暴に掻き毟った。
 「あ、いや、別に特別な理由があった訳じゃないけど―――前に、派手にドアに頭ぶつけた所を見られて、女子高生にクスクス笑われたことがあって…その時、顔を覚えちゃったもんだから」
 「ご、ごめんなさい」
 まさかあの時、顔を覚えられていたなんて、全然思ってもみなかった。永遠子は、今さっきあったことも一瞬忘れて、思わず顔を赤らめた。
 彼も、そんな永遠子に少し笑顔を見せたが、すぐに真面目な顔に戻り、永遠子の目を真正面から見据えた。
 「―――何か、あったの?」
 「……」
 「君、多分、万引きなんてこれが初めてだろう? 見ればすぐ分かるよ。普段見る子たちとは、全然違うから、様子が」
 「えっ?」
 “普段見る子たち”―――どういう意味か分からず永遠子が眉をひそめると、彼は、ちょっと気まずそうな笑いを口元に浮かべた。
 「実は俺、刑事、なんだ」
 「…け…いじ…?」
 「しかも、少年課の。…日頃、繁華街なんかを回って、中高生を補導したり、家出してる子を家に帰したり、そういうことやってるんだ」
 思いもよらない彼の職業に、永遠子はあることに気づき、ハッと顔を強張らせた。その変化に彼も気づき、慌てたように付け加えた。
 「いや、今日は、非番だから。俺の家、この近所なんだよ。で、偶然コンビニに寄ったら、いつも電車で会う子がいたもんだから―――気になって見てたら、ああいうことに」
 「わ…私、警察に行かなきゃ、いけないんですか…?」
 「いや。未遂だし、そういうつもりで、ここに連れてきた訳じゃないよ」
 「……」
 「君、ちょっと様子がおかしかったし、ああいうことしたのも無意識のうちだったみたいだし―――そういう場合は、精神的に追い込まれてて、ついふらふらと手が出ちゃった、ってケースが多いんだ。だから、話を聞かなきゃ、って思ったんだよ」

 ―――話を、聞く?
 この人に、話すの? 私が何でこうなったかを?

 そんなこと、出来ない。咄嗟にそう思った。
 けれど―――考えてみたら、助けて、と心が悲鳴を上げる時、脳裏に浮かぶ顔は、何故かいつもこの人の顔だった。助けて欲しい、とすがりつく相手は、名前も素性も分からないこの人だけだったのだ。

 「どう? 話してみない? 俺に」
 「……でも…」
 「絶対、秘密にする。だから安心して話してごらん」

 ―――話したい。
 今まで飲み込んできたこと、全部全部、吐き出してしまいたい。この人なら、話してもいいような気がする。
 もしかしたらこれは、神様が自分にくれた、最大のチャンスなのかもしれない。話すことができたら―――こんな自分を、少しでも変えることができるかもしれない。

 ごくん、と唾を飲み込む。
 永遠子は、一度大きく息を吸い込むと―――親にも話していない学校でのあれこれを、彼に打ち明け始めた。

 

 彼は概ね、黙って話を聞いていた。
 友達がなかなか出来なかったこと、出来たと思ったら、携帯電話を巡る一件でまた一人ぼっちになってしまったこと―――泣きそうになりながら、ポツリポツリと語り続けた。
 「ふうん…。俺が高校生の頃は、携帯なんて、高校生が持ってるようなもんじゃなかったからなぁ…」
 時代が違うのかなぁ、なんて言いながら、彼は眉根を寄せた。
 「でも、君が友達に言ったことは、全然間違いじゃないだろう? それに、君は善意から友達に忠告したんだろう? そのこと、その子たちに説明した?」
 永遠子は黙って、首を振った。
 「盗み聞きしてた、って言われたら、嫌だから…」
 「でも、」
 「…もう、学校、行きたくない」
 また、涙がこぼれそうになった。涙の粒が目の端に溜まっていくのを見て、彼は慌ててハンカチでそれを吸い取ってくれた。
 「1年生も、年が明ければあと3ヶ月だけだろう? クラスが変われば、人間関係も変わるよ」
 「でも…毎日、毎日、苦しいんです。朝から夕方まで、みんなに無視されて、一人ぼっちで―――家帰っても、親や兄に、そんな話、できなくて」
 「なんで、家の人に打ち明けられないんだい?」
 「…そんなわがまま、私には許されないから」
 「え?」

 そう。
 一番苦しかったのは、学校が辛い、学校に行きたくない、というこの気持ちを、両親や兄に打ち明けられないことだ。
 そんなわがまま、自分が言ってはいけない―――そんな思いに、永遠子はギリギリまで追い詰められていたのだ。

 「―――…うちの父の会社、去年の今頃、倒産したんです」
 「……え」
 「父は、結構上の地位にいたから、そのまま残って、会社の再建に当たることになったんだけど…お給料は、信じられない位に低くなっちゃって、母が、パートに出て、それを補うことになったんです。…今も、状態は同じ。父は遅くまで働いてるし、母も毎日スーパーのレジをやってるんです」
 「…そうか…」
 「兄はあの時、私より2つ年上の高2だったけど、受験は諦めて自分も働く、って言ったんです。でも、両親は、それは絶対ダメだ、って―――なんとかするから、気にしないで頑張れ、って言って。…兄は、受験の費用も馬鹿にならないから、1校に絞るって言ってます。それに、大学入ったら、絶対奨学金もらうようにするって。多分…やり遂げるんだと思う。昔から凄く頑張り屋だし、成績も元々悪くないから」
 そこまで言うと、永遠子は、大きく息を吐き出して、俯いた。
 「…私は、ダメなんです」
 「ダメ?」
 「本当は、公立の高校狙ってたのに―――落ちちゃったんです」
 「……」
 「親は、今通ってる私立の方が少しレベルも高いし、附属高校だから大学進学も一般より楽だ、って言ってくれるけど…私、全然嬉しくなかった。本当に行きたかったのも公立だし、家のためにも公立の方が良かったのに、ほんとに些細なミスで合格できなくて―――悔しくて、情けなくて」

 両親は、永遠子を責めない。
 多分、予想外のことだったろうに―――志望校は十分すぎるほど、永遠子の成績の範疇だったから、受かって当然だろうと思っていたのに違いないのに―――決して永遠子を責めない。落ち込む永遠子を、申し訳なさそうにする永遠子を、むしろ励ましてくれる。
 けれど、永遠子は見てしまった。夜、永遠子や兄が寝静まってから、両親が難しい顔で色々話し合っているのを。その内容は、今後の家計のやりくりについて、父の会社の行く先について―――そういう、お金の話だった。
 母は1年で、随分痩せたように思う。父も白髪が目立つようになった。
 そういう両親に気づくたび、兄の頑張りを見るたび…追い詰められる。頑張ってる家族の足を引っ張るだけの自分に打ちのめされて。

 「学校のこと…両親になんて、絶対、言えない。家計が苦しいのに、無理して通わせてくれてる学校なんだもの、文句言う資格なんて、私にはない。我慢しなくちゃ、我慢しなくちゃ、って、毎日毎日……そう思うたび、息が出来なくなって、このまま死んじゃいそうな気がするんです…」
 「……そ…っか…」
 「…中学の時の友達は、私と同じ学校を受験して、一緒に通おうね、って約束してたけど…私は落ちて、彼女は受かって。4月までは電話もやりとりしてたけど、やっぱり新しい友達とか出来たみたいで―――最近、連絡もないんです」
 「君の方からかけてみたら?」
 「最後にこっちから電話かけた時、“携帯に友達から電話かかってきたから”って切られちゃって…それ以来、怖くて電話できないんです」
 「…そうかぁ…」
 「もう、やだ」
 膝の上で組んだ手に、ポタリ、と涙が落ちた。
 「こんな自分が、もうやだ。けど…どうしていいか、分からないの。お父さんの会社が再建できたら、学校がもうちょっと楽しくなったら…って、希望ばっかり持つけど、そのために何ができるんだ、って考えても、何も思い浮かばなくて…でも、学校辞めることもできないし」
 「学校を辞めるのは、まだ早いと思うよ?」
 彼はそう言うと、永遠子の頭を、くしゃくしゃっと撫でた。
 「あと、3ヶ月。クラス替えがあるまで、とりあえず頑張ってごらんよ。そしたら、状況なんてどう転ぶか分からないからさ」
 「…でも…もう、一人ぼっちは、耐えられないんです…」
 「俺が、ついてるからさ」
 突如、そう言われて。
 永遠子は驚き、顔を上げた。
 目を丸くして、彼を見つめる。彼は、言ってしまった後から照れを感じたのか、永遠子の目にうろたえたように、あはははは、と照れ笑いを返した。
 「ほら、親に話せない話聞いたり、鬱憤晴らしに愚痴ったり、そういう相手なら出来るよな、と思ってさ。こういう仕事してるから、あまり規則正しい生活とはいかないけど―――家の電話番号教えるから、もうどうしようもなくなったら、いつでも連絡くれればいいよ。ああ、それと、朝会った時とか、ね」
 「…ど…どうして…? 私、刑事さんにとっては、何でもない女の子なのに…」
 「あー…、いや、実はさ。君の話、ちょっと他人事とは思えないから」
 「?」
 どういう意味だろう? 永遠子が不思議そうにしていると、ちょっと言葉を切った彼は、やがて、こう告げた。

 「実は俺、高1の時、不登校だったんだよ」
 「…えっ」
 「と言っても、君のとこみたいに、家が大変だとか、学校でいじめにあってたとか、そういう理由じゃないけど」
 「じゃあ…なんで、ですか?」
 「うーん、なんで、かなぁ? 確かに友達がいなかったよなぁ。君と同じで、志望してた高校落っこちちゃってね。俺の場合は、逆。私立狙ってて、公立に行く羽目になった。…なんか、クラスメイトと合わなかったんだよな。でもそれは、心のどこかで“落ちた高校の方が良かった、こんな高校通ってるやつらとなんか友達になりたくない”なんていう、生意気な考えを持ってたからかも」
 意外な話に、永遠子が更に目を大きく見開くと、彼はほっ、と息をつき、やがて穏やかな笑顔に戻った。
 「…俺もやっぱり、親には言えなかった。学校行くふりして、ゲーセンとかをうろついててね。そんなことしてたら―――ある日、2人組みの少年課の刑事に、声かけられたんだ」
 「ほ、補導されちゃったの?」
 「いや。若いのと年配のの男2人のコンビでね。年配の方の人は、俺の話を色々聞いてくれた。ファミレスで、それこそ何時間もね。思春期で、親ともあんまりうまくいってなかったし鬱憤だらけの高校生だったから、話すことはいっぱいあったよ。で、俺が色々鬱積したもんをぶちまけたら―――若い方が、怒鳴ったんだよ」
 その時のことを思い出したのか、彼は苦笑を漏らした。
 「親のことを“俺のことを理解してくれない”って愚痴ったらね。そいつ、“お前、ゲーセンでUFOキャッチャーにぶちこんだ100円玉のうち、1枚だって自分の力で稼いじゃいねーくせに、何生意気なこと言ってんだ! 自分の金で高校通ってるとでも思ってるのか! まだガキなんだから、ありがたく通わせていただきます、って頭下げて通えってんだよっ!”…って怒鳴り散らされてね。そりゃもう、びっくりした。怒鳴られた経験なんてなかったしね。もっともな話だって、頭では分かってたけど、俺もガキだったからね。その時は“お前に何が分かる”って反発しちゃったよ」
 「……」
 「高校なんて辞めてやる、甘えるなガキ、って2人で言い争いになっちゃって―――そしたら、年配の方の人が、言ったんだ。“じゃあ、せめて1年生が終わるまで、ちゃんと通ってみないか? 2年生になっても、学校通うことの意味が見つけられなかったら、また相談に乗るから”って。若い方は“こいつにあと半年も通う根性なんかないっすよ”って挑発するし…なんか、悔しくなって、結局俺は、そのまま1年生終わるまで、高校に通っちゃったんだ」
 「そ…それで、どうなったの?」
 「それがね。2年生になった途端、友達ができてさ。毎日が楽しくなった。そいつとは今も親友だよ」
 だから―――永遠子にも、あと3ヶ月頑張ってみろ、と言ったのか。実体験から来る言葉だったと知って、永遠子は深く納得した。
 「じゃあ…その半年間、刑事さんを支えてたもの、って、何?」
 「それがね」
 彼は苦笑を強め、僅かに肩を揺らした。
 「おかしなことに、“お前に半年も辛抱できるか”って挑発してきた、あの若い方の奴だったんだよな」
 「え? 年配の方の人じゃなくて?」
 「そう。あいつが事ある毎に挑発してくるもんだから、畜生、絶対辞めてなんかやるもんか、って意地になったんだよ。でも…2年に上がって、友達も出来て学校が楽しくなった、って話をしたら、より喜んでくれたのは、その若い方の奴だったんだ。もうお前もこれで大丈夫だな、って言って―――以来、もう会ってない。だから、分かったんだ。あの人の挑発は、俺に学校行かせるためだったんだな、って」
 「……」
 「あの2人との出会いがあったから…俺は、同じ道を選んだんだ。まだまだ経験は足りないし、不良連中のさばき方には慣れても、君みたいな“迷ってる子”の手助けは、これが初めてだけど―――…」
 ふっと表情を緩めた彼は、もう一度、永遠子の頭をくしゃくしゃと撫でた。
 「…こんな俺でも、君が学校に行くための支えになれる部分があったら、と思う。だから、あと3ヶ月―――頑張ってごらんよ」
 「―――…」


 ―――本当、に?
 本当に、助けてくれるの?


 信じられなかった。

 でも―――信じてみよう。そう、思った。


***


 定刻通り、電車が構内に滑り込んだ。
 前から3両目の、真ん中のドア。永遠子は、他の乗客と連なるようにして、開いたドアから車内へと入った。
 立ち位置は、迷わず、進行方向左側のドアの傍を選ぶ。そこに、ドアにもたれかかっている男の人を見つけ、安堵にホッと胸を撫で下ろした。
 「おはようございます」
 「おはよ」
 もう何度目かの、朝の挨拶。永遠子と彼は、ほぼ同時に笑顔を浮かべ、軽く頭を下げあった。
 「昨日は、すみませんでした。遅い時間に電話しちゃって…」
 「いや、いいよ。それにしても嫌味な子が多いねぇ、君の学校。名門なのに、嘆かわしいな」
 「あはは…、多分、私が相手だから、そうするだけです。友達同士の間では、あの子も優しいみたいだもの」
 年が明けても、永遠子の日常は、ほとんど変わらない。
 でも―――随分、変わった。

 永遠子は今、自由に息をしている。
 苦しくなったら、隣に立つ彼が、苦しさを受け止めてくれる。どうしても我慢できなくなったら、泣くための場所を彼が永遠子にくれる。そう信じられるから―――自由に、息ができる。
 もう、一人ぼっちじゃないから。
 彼が、助けてくれるから―――頑張れる。以前は、頑張れなかったことも。

 2年生になるまで、まだ1ヶ月以上、ある。でも、きっと頑張れると思う。
 そして、永遠子が本当に、1人でも自由に息ができるようになった時―――彼に、想いを打ち明けよう。永遠子はそんなことを思っている。
 もっとも、玉砕の可能性は、限りなく高いのだけれど。

 ―――でも、今、こんなに頑張れるんだから、失恋だってきっと乗り越えられるよね。


 「…なんか、思い出し笑い?」
 うっすら微笑んでいる永遠子に、彼が怪訝そうな顔をする。慌てて顔を引き締めた永遠子は、ふるふると首を横に振った。
 「怪しいなぁ。そういう笑い方は、恋の悩みだぞ。学校に気になる男の子でもできたんじゃないか?」
 「違いますっ。思い出し笑いなんかじゃないです」
 「本当かなぁ」
 「未来を思って、笑ってたんですから」
 「は?」
 なんだそりゃあ、という顔を彼がした時、電車が、永遠子の降りる駅に停車した。
 ガタン、という電車の揺れに、永遠子の体もかしぐ。あたふたと体勢を整えた永遠子は、彼の方に向き直り、二コリと微笑んだ。
 「じゃあ、行ってきます」
 「行ってらっしゃい」

 開いたドアからホームに降り立つと、間もなく、扉は再び閉まり、慌しく電車は出発していった。
 遠ざかる電車を見送りながら、永遠子は鞄を持つ手にぎゅっと力を入れた。


 ―――うん。大丈夫。
 今日も1日、きっと、頑張れる。

 口元をきりりと引き結ぶと、永遠子は1歩、踏み出した。


380000番ゲットの姫さん、および400000番ゲットのひなたさんのリクエストにおこたえした1作です。
2つのリクエストなのに作品1つとは、これいかに(笑) ごめんなさい、どうしても合体させたこの話を書きたかったんです。
ご希望は、「通学電車内での恋」(姫さん)と「刑事さんがでてくる恋愛話」(ひなたさん)。
最初はばらばらに考えてたんですが、ある日突然、こういう話がポンと頭に浮かんで、そこから離れられなくなってしまいました。やむなく、合体です。
最後まで「彼」、名前が出てきませんね。いえ、決して筆者の怠慢ではないですよ。出す機会がなかっただけです。ほんとですってば。


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