キリリク断念ストーリー・ランキング

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2005年5月〜7月に行われた「キリリク断念ストーリー・ランキング」。
キリ番を取ることを断念した(?)方々の多数の投票をいただきました。みなさん、ありがとうございました。
結果のほどは こちら をご覧いただければ分かると思いますが―――とんでもないリクエストが1位をゲットしてしまいました(汗)
しかし! 宣言したからには書く! 書く! 書く!
ご要望通り、「どう見ても女にしか見えない男三人が同じ学校(職場)に偶然集ってしまった話」を書かせていただきました。

ちなみに、結城、今回少々壊れ気味です。真面目なお話をお求めの方は、避けておいた方が無難です。
よろしいですね? では、どうぞ。

 


 

オレの嗜好に関する真面目かつ真剣な考察について。

 

 

 そもそも、初恋の相手が、オレの好みを決定づけたと思うんだよな。

 中学1年の時転校してきた、超ボーイッシュな、美人の女の子。背もオレより高くて、ヤローどもは「おとこおんな」なんて陰口叩いてたけど、それまで恋愛沙汰に無関心だったオレが一発で恋に落ちたんだから、オレの好みにはジャストミートだったんだと思う。
 思い切って告白したら、びっくり。向こうもオレのことが好きだって言うんだから。
 結局、中3の春まで付き合ったかなぁ…。手を繋いでデートするの、すっごい楽しかったよなぁ…。
 え? その子が理想なら、何で別れちゃったのか、って?
 …しゃーないじゃん…。その子の親、転勤がすんごい多い会社に勤めてて、彼女もまた転校しちゃったんだから。
 最後のデートで、彼女の方からキスされて相当焦ったけど、ホントに好きだったから、彼女がファーストキスの相手でよかったなぁ、と、今でもホントに思うよ。

 …何、固まってんだよ。
 中3で初キッスって、そんなに遅い?
 え、違う? じゃあ何だよ。いいじゃん、1年以上付き合ってキスすらしない、初々しくて清らかな交際があったってさ。なんたって、オレの初恋なんだから。

***

 彼女と別れちゃった後は、1年下の子が可愛いなぁ、と思ってたんだけど、どうしても初恋の彼女と比べちゃって、結局告白することなく、卒業して。
 で、高校に進学したんだけど。
 なんかねー、どうにもねー、好みの子がいないんだよね。
 お前もうちの高校だから、知ってるだろ? うち、男女比が恐ろしい位に男寄りだし、数少ない女の中に“ボーイッシュで、かつ美人”なんていないしさ。がさつで男と見間違える女ならいるけど。
 これでも結構モテるから、次々告白してくる奴はいたけどさ。好みにはほど遠いんだよなぁ…。しかも、オレに告白してくるのって、なんでか分からないけど、男ばっかりだし。
 別に恋愛目的で進学したわけじゃないけど、好きな人がいると生活に潤いがあるじゃん。なんか寂しいよなぁ、なんて愚痴ってたら、カオリが耳寄り情報教えてくれたんだよね。

 『へー、ボーイッシュで綺麗な女の子が好きなんだ? だったら、西高に遊びに行ってみたら? なんでも、1年生にチョー可愛い3人組がいて、それがまた、全員ちょっとボーイッシュ系らしいよ?』

 …こら。笑うな。
 オレだって、最初聞いた時は「そんな漫画みたいな話がある訳ないだろ」って鼻で笑ってたんだって。
 でも、冗談半分でカオリについてったら―――ホントにいたんだよ、そういう3人組が!!

 1人はオレより背が低くて、髪も栗色でフワフワしててさ。外国の映画に出てくる子役みたいな子。と言っても、やるなら男の子の子役だけど。ボーイッシュでカッコイイ、っていうより、可愛い可愛いって頭撫でたくなるような子でね。
 オレよりもうちょい背が高い子は、なんていうか―――ちょっと神秘的?
 おいっ! 「似合わない単語使って」とか言うなっ! お前だって絶対そー思うぞ、実際に見たらっ!
 3人で話してても、その子だけはいつも聞き役で、静かに微笑んでうんうん、て頷いてるような感じなんだって。でも、3人の中で一番綺麗な顔してて、髪もちょっと長めでさ。一昔前だと、ああいう子って、実は不治の病を抱えてて、人知れずサナトリウムとかで若くして命を落としたりするんだよなぁ。
 …だから、笑うなってっ。
 んで、もう1人は、オレよりはるかに背が高い。180近くありそう。あまりにデカいから、一瞬、男か女か悩んだけど、まつげ長いし、肌がめちゃくちゃ肌理細やかだし…いわゆるクール・ビューティーってやつ? スーパーモデルとかになりそう。
 そういう3人組が、学校帰りに、3人並んでにこやかに談笑してたりするんだぜ? 天国みたいな光景だと思わない?

 …おい、征四郎。
 お前、ぜってー信じてねーだろ。
 そんなに笑う奴は、こうしてくれる! どーだ! まいったかっ!
 何? よく聞こえないぞ。「ごめん」? バカ、そんな程度で許すかっ。真面目に聞く気あんのかよっ。
 ―――よし。10回頷いたな。許してやる。
 どうした、顔色悪いぞ。ああ、ちょっとマジで技かけちゃったからなぁ。はい、大きく息を吸ってー。はい、吐いてー。

 大丈夫か?
 大丈夫だな。じゃ、続き。

***

 で、オレとしては、是非その3人とお近づきになりたいな、と思ったわけよ。
 勿論、一番好みなのは、一番背の高い美女だったんだけど―――いくらなんでも背が高すぎるよなぁ、一緒に歩くとバランス悪そう、って思うと、他の2人の方が付き合うにはいいかな、と思ってみたり。
 ともかく、あの3人が仲のいい同士なら、いっそ3人ともと友達になって、4人で友達づきあいする中で「この人!」と思った1人にアタックかけようかと思ったんだよね。
 意外に慎重だろ?
 …頷くなよ、征四郎。日頃、慎重じゃないみたいじゃねーかっ。

 ただ、問題は、オレには西高の知り合いがいないってこと。
 あの3人の名前もクラスも分からない。ほら、西高って、制服なくて私服だろ? だから仕方なく、自分の中では「赤チェックの子」、「スタンドカラーの子」、「ジャケットの子」って呼び分けてた位。え? 意味わかんない? 背の順に、初めて見た日に着てた服がそれだったんだって。
 唯一の頼みの綱がカオリなんだけど、仲介しろ、って言っても渋るばっかりだし。
 それにオレ、結構シャイだから、見ず知らずの西高の連中に「あの子たちの名前とか教えて」なんて頼むこともできないし。
 え? 意外?
 いや、マジで。
 まだ小学校の2年か3年の頃、親に頼まれて買い物に行って道に迷っちゃってさ。たまたま通りかかったおっさんに道訊いたら、案内してあげる、って言われてついてったら、ヘンな神社に連れ込まれてさ。あれ以来、見知らぬ人に声かけるのがダメになったんだよなぁ。
 …あれ? どうした、征四郎。青い顔して。
 そのおっさんと、どうなったか、って?
 ハハハハハハ、心配するなって。勿論、二度とアホな真似できないように××××××して、泣いて許しを請うまで痛めつけてやった―――んぐぐぐぐぐぐ、は、はなせ、征四郎っ。いきなり口塞ぐなっ。わかったわかった、放送禁止コードにひっかかる発言は自粛するから。
 変態のおっさんは、どーでもいいんだって。
 それより、その3人の話。

 とにかく、カオリが頼りにならないもんだから、自力でお近づきになるしかないな、と思ったオレは、そのチャンスを訪れるのを待って、ひたすら下校時刻に西高の辺りをうろついてたわけよ。
 この時も、ヘンな男がいっぱい釣れたよなぁ…。なあ、オレってそんなに、男好きする顔か? オレは、可愛い女の子に声をかけられたかったのに、世の中、うまくいかないよなぁ。
 …だから。またイチイチ青い顔になるなって。声掛けてきたヘンな男は、全部足蹴にしてたから。オレの目的は、ボーイッシュ美少女3人組だけだっつーの。
 んで、そんな日々が2週間ほど続いて―――ついに! ついに、最大のチャンスが訪れたんだよ!
 「赤チェックの子」…一番背が低い、ハリウッド子役みたいな子ね、そいつが鞄につけてたお守りが、偶然落っこちたのを発見しちゃったのよ、オレ!
 何。ありがち、って。いいじゃん、ありがちでも。ハンカチ落として「お嬢さん、ハンカチが落ちましたよ」よりは、少しはオリジナリティがあるだろ。文句言うなよ。
 他の連中に拾われたら大変だから、そりゃもうダッシュで走ってって、即座に拾ったオレは、意を決して声をかけたわけだ。

 『あのっ! すみません、お守り、落ちましたよ!』

 で。
 どうなったと思う? 征四郎。

 美少女3人組は、一斉に振り返って、お守り差し出すオレを見て、目を丸くしてたんだけどさ。
 落とし主である子が、嬉しそうにお守り受け取りながら、言ったんだよね。

 『あ、ほんとだ。どうもありがとう』

 そりゃあもう。
 女の声では絶対あり得ない、変声期終わりましたって感じの、「男の声」で。


 …おい。
 征四郎。
 いくら面白いからって、人の不幸をそこまで笑い倒すとは、いい根性だな。

 どーりでカオリが乗り気じゃない筈だよ。あいつ、あの3人組が“美少女3人組”じゃなく“女顔の男3人組”だってことを知ってた上で、オレをからかうために情報提供しやがったんだ。むっかつくーっ。
 でも、もっとむかつくのは、あの3人だよ。
 普通、女顔のヤローが3人も同学年にいるなんて―――しかも友達同士で、つるんで歩いてるなんて、あり得るか!? 1人が女顔でも、他が普通のヤローどもだったら、オレだって男だって気づいたかもしれないのに。女みたいな顔が3人集まってたら、普通は女の集団だと思うだろ!?

 予想外の展開に固まってるオレをよそに、連中、「キミ、どこの高校?」とか「うちの高校の奴でも待ってたの?」とか「暇なら今からカラオケ行かない?」とか、とか、とか、もー、自分達のペースで勝手に話を始めるし。
 え、それでカラオケに付き合ったのか、って?
 まさか。こっちは美少女だと信じてたから声かけたんであって、男には用はないんだから。

 『お前ら、3人揃って紛らわしすぎるぞ。迷惑だ』

 って言い捨てて、逃げてきた。
 …まあ、青春の苦い思い出さ。どーせオレの見る目がなかったんだよ。勝手に笑え。


***


 「―――けどさあ、望」
 ひとしきり笑い倒し終わった征四郎は、手の甲で涙を拭きながら、不貞腐れている望の方を見た。
 当時のことを思い出したのと、征四郎が予想以上に大笑いしたことに機嫌を損ねている望は、ぶすっとした表情で征四郎を睨んだ。
 「…なんだよ」
 「そういう、苦い思い出があるってのに、お前、なんで俺と付き合ってるの?」

 そう言って不思議がる征四郎は、自他共に認める“女顔”の男子大学生。

 そして、苦い思い出に眉を顰めている(のぞみ)は―――日本人形と喩えられるほどの容姿に恵まれた、超絶美少女女子大生である。

 「女顔の男に散々な思い出があるなら、なんで俺の告白にイエスって答えたわけ?」
 「…別に。あの3人組の経験で、気がついただけだよ」
 「何に」
 「オレが好みだったのは、どうやら“ボーイッシュな美少女”じゃなく、“女と見まごうほど美形な男”だったらしい、ってことに、さ」


 こんな2人。実は周囲には、「超美形と超美少女のゴールデン・カップル」と呼ばれている。
 が、本人達は、そんな声を、全然知らない。

 

…いかがだったでしょうか(汗)
実は、1位設定、相当頭を抱えさせていただきました。 女顔が3人集まると、無関係な第三者は混乱して大変だろうけど、本人(女顔)たちはむしろ、1人1人のインパクトが軽減して、生きやすくなるんじゃないの? と。
で、チャット中に、皆様に相談しているうちに、「そうか、女顔3人を主役に据えようとするから無理があるんだ! 3人に振り回される側を描けばいい!」ということに気づいたのでした。
ご協力下さったチャット参加者の皆様、ありがとうございました。
あの時言ってた設定と、ある意味、180度違ってますが、あんな場所でネタをバラす結城ではないので、「違うじゃんかーっ! 騙したなーっ!」と怒らないで下さい。ハハハハハ。

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