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++ afterwords ++
―あとがき―

  「Step Beat」、最後までお付き合い下さいまして、ありがとうございます。

 この話を書き始めたのは、2003年の秋です。オンライン・オフライン合わせると、都合半年、彼らと付き合ってきたことになります。
 長編は、もう10年以上書いてなかったので、ENDマークを入れた瞬間、本気で泣きそうになりました(笑)

 さて。多分、かなりの部分が「自己満足」「蛇足」「補足」「そういうのは本文で書け」になりそうな気はしますが……つれづれなるままに、「Step Beat」について語ってみたいと思います。結構、長いです。お暇なら&自称「Step Beat」マニア(いるのか?)の方なら、暫くお付き合い下さい。


++再生のものがたり ++

 「親にもどこか遠慮してるような子だったなぁ。眠っていても、物音をたてたらすぐ目を覚ましそうで、この子は本当に熟睡する事なんてあるのかしら、って、いつも思ってた」
 …ええ、そうでございます、おかーさま。結城はそーゆー奴でした。13歳から、つい数年前まで。

 結城も一度、それまで築いてきたアイデンティティをバラバラにぶっ壊される、という経験をしております。いや、瑞樹や蕾夏に比べたら可愛いもんですが。
 空が青いと言っては喜び、道端ですずめが死んでたと言っては死骸を抱き上げて泣く(実話)という子供であった筈の結城は、以来10年以上、「強くて」「クールで」「しっかり者」の仮面を被って生きてきました。強いスタンスを保ってみせる裏で、疎外感や不安感から、胃けいれんや呼吸困難を起こしたりしながら。

 ところが今、結城は再び、空を見て喜び、小さな生き物を見て大はしゃぎする自分を見つけてます。まだ、ある人の前でだけしかそんな自分を見せることはできませんが、いつかは、子供の頃の結城を取り戻せるかもしれません。

 いつ、再生し始めたんだろう?

 …そっか。自分の口で、抱えてきた痛みを、その人に話した時からか。

 そんな事に気がついた時、「Step Beat」の最初のひとかけらが、生まれました。
 だから、「Step Beat」は、恋愛小説というより「再生の物語」なんです。


++ 30→100 無謀な転向 ++

 実はこの「Step Beat」、最初は「30のお題」に沿ってやる予定で、30話ちゃんと最後まで書いてあったのです。それが確か、2003年の秋が終わった頃。
 ところが! ななななんと、結城がせっせと30話書いてる間に、お題を配ってるサイトが突然の「休止宣言」。現在チャレンジ中の人はいいけど、新たな参加は認めません、と言われてしまいました。
 …結城ですか?
 書くのに夢中で、参加表明なんてすっかり忘れてましたよ(怒)←自分に怒っている
 いつ再開されるのか、その目処も立たないまま時は過ぎ―――推敲してるうちに、だんだん「こんなエピソードも入れたい」「あ、こんなのも」と欲が出てきてしまったら。
 …30話じゃ、足りないじゃん。

 かくして、100のお題に無謀な転向です。
 なんだか、30のお題と違って「セックスと純潔」だの「裸婦の肖像」だの、果てには「γ線」だの「・・・」だの、一体何を書けっちゅーねん、というお題が山盛りで、Excel表にお題貼り付けていろいろ並べ替えながら、毎日毎日唸ってました。
 最終的には―――まあ、転向して正解だった感じです。
 個人的にクリティカルヒットだったお題は「なかったことにして」。100話中、もっともノッて書けたお題です。


++ 誰もが主人公、ゆえに脇キャラなし ++

 …いや、確かに、いるにはいます。課長とかね(蕾夏の敵役としてがんばってたけど、彼主人公の話は全然思い浮かばない…)。
 でも、名前が簡単にあがるレベルのキャラは、一応、全員「主人公になれるだけのバックボーン」を意識して書いてました。朝倉 舞主役の話ってのもありそうだし、辻を主人公に据えても1本書けそう。佐野あたりはほとんど登場させられませんでしたが、彼なんかは主役にしたら面白いものが書けそうなキャラだったりします。リカちゃん(覚えてますか)主役も、なかなか激しいものが書けそうですねぇ…。

 別に、番外編量産を狙ってる訳ではないですが、主要6名以外のサイドストーリーも、これから書いていくかもしれません。


++ 瑞樹と蕾夏 ++

 彼らを描く際、常に意識してたのが「不完全」「未完成」ということ。

 内面に危険なまでの激しさを持ちながら、表面は常に沈着冷静を装ってる瑞樹。表面上フレンドリーに人と接しておきながら、実は常に他人との距離を測っていて、踏み込まれるのを拒んでいる蕾夏。どっちも、到底理想的な人間とは言えない、「欠けている人間」です。同世代の久保田や佳那子のバランスの良さと比較すると、彼らはほとんどティーンエイジャー並みです。あ、恋愛も、まるでティーンエイジャーですね(笑)

 愛情不足の瑞樹からすれば、素直で真っ直ぐな愛情を注いでくれる蕾夏は、真っ直ぐだからこそその愛情を信じることができる唯一の人だと思います。
 また、愛情過多の蕾夏からすれば、蕾夏の強さを認めた上で、いつでも話を聞くから、と手を差し出したまま待ってくれる瑞樹は、束縛を感じずにその手を握れる貴重な存在なのかもしれません。

 「未完成」だけれど、2人で補いあえば、なんとかなる。そんな関係が、自然と「再生」に繋がっていけばいいんだけど、と思いながら書いてましたが……さて、十分、描けたのでしょうか(^^;


++ 何故瑞樹は倖にならなかったのか ++

 「Step Beat」一番の問題キャラ・八代 倖。彼女を書くのは、苦労しました。自分の中には、彼女と重なる要素があまりにも無いので。
 瑞樹と倖を比べると、倖のダメっぷりが目立ちます。何故瑞樹は、倖みたいな大人にならずに済んだんでしょう?

 1.持って生まれた素質の問題。単に瑞樹の方が倖より優れた人間だっただけ。
 2.とりあえず父には愛されてた瑞樹と、両親ともから見放されてた倖の違い。瑞樹の方がまだ幸せ。
 3.瑞樹には海晴がいたから。妹を必死に守ることで、少なくとも瑞樹は「人の愛し方」はちゃんと学んでいた。

 …うーん。全部かもしれない。


++ ストイックな恋愛萌え? ++

 結城は基本的に、恋愛小説がダメです。書けません。というか、書けませんでした。ずっと。
 でも、人間て怖いですね…。それなりに人生経験積むと、キスシーンだけでオロオロとうろたえていた結城が、あんなこともこんなことも書けちゃったりするんですから。とはいえ、年齢制限の問題があるし、やっぱり×××なシーンや△△△なシーン(←適当に妄想して下さい)は、恥ずかしすぎて到底書けないんですが。
 そんな結城に恋愛の行く末を委ねるしかなかった瑞樹は、極端なまでにストイックな奴になってしまいました。まるで修行僧です。他サイトの主人公たちが見たら「あほ! はよ行け! 何をグズグズしとるんや!」(何故関西弁?)と発破かけたくなるほど、ノロいです。
 でも、なんか完結してみて読み返してみると、50話以降90話あたりまでの瑞樹って、なんだか好きです。耐えろー、耐え抜けー、と自らに言い聞かせながらちょこっとずつ前進してく姿に、ああ切ないわ、と萌える女性も結構いるのではないかと推察しております。
 男性から見たらどうなのか…筆者からすれば、そこんとこが、一番不安ではありますが。


++ 狙いボケと天然ボケ ++

 afterwords書いてたら、読者の方から誤字・脱字メールをいただきました。
 すんごく細かく読んで下さってて、ああ助かる助かる、と喜んで直していたんですが、そのご指摘の中に結城の「狙いボケ」と「天然ボケ」があったので、ちょっとご紹介しておきます。

 まず、狙いボケ。最終話の最後の方、飛行機が苦手な蕾夏は、イギリスまでの10時間のフライトを想像してげんなりです。で、飛行機は地面の上を滑ってると思い込め、という瑞樹に「太平洋の上も滑る訳?」と、到底思い込むことはできない、とボヤいてます。
 お気づきでしょう。イギリスへ行くのに太平洋上は飛びません
 でも蕾夏は、そういう細かい事に疎いです。飛行機→長時間飛ぶ→海の上だって通る→太平洋。だって、成田空港から一番近い海だから。
 むしろ、あの蕾夏が、フライトコースを事前にチェックして「この飛行機は○○の上を通過するぞ」と覚えてる方が、蕾夏っぽくなくて変です。だからあえて、ああいうボケをかまさせました。読者に突っ込んでいただこう、という、結城的お遊びです。

 でもって、天然ボケ。もう直しちゃいましたが、作中2度ほど、ファインダーを覗いた視界について「丸い」という表現を使っていました。
 お手持ちのカメラを構えてみてください。ファインダーは、四角いです
 こら、結城〜〜〜〜! お前は何年カメラを構えてるんだ! 途中で気づいたけど、もう完結するまでいいや、と仕事の忙しさにかまけて放置してました。呆れます、丸いファインダー…。
 何故丸いと書いたのか、全然わからないんですが、思い当たるふしが、一つだけ。
 …結城、いつもカメラ構える時、枠を全然意識してません。中央だけを見つめて撮ってることが多いです。もしかして、視野の関係で、ファインダーを丸と認識してたりして…(汗) ハハハ、プロにはなれませんね……。


++ Step Beat の枝葉 ++

 「Step Beat」自体は完結しましたが、この話には、実にいろいろな枝葉があります。
 まずは、多恵子主役の話。多恵子大学1年〜自殺する日まで、約4年半のお話です。メインキャラとして、久保田と瑞樹(最後の方は佳那子も)が出てきます。暗いです。久保田は今よりちょっと無謀さがあるけど、あんな感じ。瑞樹は…「Step Beat」冒頭より酷い。お前は生きてるのか死んでるのか、どっちだ、って感じです。
 それから、ちょっとだけ出てきた佐倉さん。彼女は、多恵子のお話のメインキャラでもあるんですが、彼女自身のお話もあるにはあります。ただ、書くかどうか、微妙な感じ…。これには、「Step Beat」より後の瑞樹(と蕾夏も?)が出てきます。
 勿論、久保田と佳那子の行く末についても描きたいよなぁ、と思うのですが…単体では、書かないかも。(理由は後ほど)

 で、大きな幹の部分は、前々からその存在をリークしておりました「Step Beat × Risky」へと繋がっております。勿論、イギリスに行った瑞樹と蕾夏のお話ですね。時田がば暫し登場しますが、新キャラが沢山出てきます。その新キャラたちの枝葉もあるんだよなぁ…。広がるなぁ。困ったぞ。

 んでもって、その先ですが―――時期が、飛ぶかもしれません。×年後、という形で。久保田と佳那子の行く末は、そっちに入れ込んじゃうかも。
 今のところ3部作にしようかな、と思ってるんですが、どうかなぁ…。「Step Beat」で終わらせるもよし、「Step Beat × Risky」で終わらせるもよし、なので、悩ましいところです。

 まあ、そんなこんなで、彼らとはまだまだ、暫くお付き合いしてかなくちゃいけないようです。

 個性派揃いで自己主張の激しい連中ですが、皆様、今後ともよろしくお願いします。


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