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― afterwords


 「Step Beat COMPLEX」、最後までお付き合いいただきまして、ありがとうございました。

 この作品は、「Step Beat」シリーズ第3弾ですが、実はこのシリーズ、当初の予定ではこの第3弾で終わる筈でした。
 勿論、この内容で終わる訳ではなく―――第3弾の中に、もっといろんな要素を盛り込む予定でいたんですね。つまりは、大筋である、瑞樹と蕾夏の物語の完結部分を、本来はこの第3弾でやる筈だったんです。
 ところが、です。お読みになって分かるとおり、瑞樹と蕾夏に話を限ると、今回、スタート当初と最終話で、あまり変化がありません。他の2組(と新しくサブ的位置づけになった猫やんや舞やイズミ)に劇的変化があったのに比べると、あまりにも地味です。
 さて。なんでこんなことになったのか。
 早い話、「全員の話を、この1回の連載の中に盛り込むのは無理だ」と、プロット段階で気づいたからです。
 いや、やろうと思えばできない話じゃないんですが…やってしまうと、あっちのカップルもこっちのカップルも大変で、全然まとまりがつかない状況に陥るのが目に見えてしまったのです。当然といえば、当然のことでした。
 そんな訳で、今回最大の目的は、「瑞樹と蕾夏以外の問題を全部片付けること」(笑) 乱暴なようですが、つまりは、そういうことなんです。

 今回は、前2作に比べると、テーマ性というところで幾分はてなマークがつくかな、と思っています。
 実を言えば、結城の中でも曖昧なテーマなのです。というか、今も答えは出ていないテーマでして…。
 具体的に表現するのが難しいのですが、あえて単語1つで表すならば、「家族」だと思います。
 瑞樹は何度も自問します。「家族って、何だろう?」―――同じ籍に入っていれば法的には「家族」ですし、たとえ法的には他人でも一つ屋根の下に暮らしていれば「家族」になってしまう場合もあります。夫婦なんて、血が繋がってないのに「家族」ですし、遠く離れて暮らしていても、血の繋がった親子はやっぱり「家族」ですね。
 でも、瑞樹にとって倖は、果たして「家族」だったんだろうか、とか。
 イズミは、舞が誰かと結婚したら、その相手を「家族」と認識できるんだろうか、とか。
 そういったことを考えると、結局また元に戻ってしまうのです。「家族って、何だろう?」……結城の中でも、まだ、答えは出ません。
 和臣と奈々美は、新たな家族を“生み出し”ました。久保田と佳那子は、新たな家族を“築き上げる”ことでしょう。じゃあ、瑞樹は? イズミは? …最後まで読んでも、その答えはやっぱり出ていない気がします。本人達が、いつの日か「ああ、これが家族なんだ」と思った時、彼らそれぞれの中の「家族」の意味が見つかるのかもしれません。

 そういう大テーマをこっちに置いといて、瑞樹と蕾夏だけにスポットを当てますと―――今回のテーマは、44話の最後の部分ですね。
 「2人で歩む前に、1人でも歩める自信をつける」。その決意をひたすら固めるのが、今回の2人のテーマです。
 久保田と佳那子は、2人で自立することを目指してましたが、瑞樹と蕾夏は「2人でいるためには、まず1人1人が己の力で立つ」ことを目標としているようです。支えあう、という図式は、それはそれで素晴らしいし、実際、あの2人も支えあって立っているのですが、「支えてもらわないと立てない」では駄目。それでは「支えてもらわないと立てないから一緒にいる」になってしまうから。
 全てから自由になって、一緒にいたい―――その「全て」の中には、周囲だけではなく、自分達の中にあるものも入っているから、呪縛に囚われたままの今は、まだ一緒にはいられない。そんな状態の2人が、「COMPLEX」の2人です。

 なお、「COMPLEX」は、読み終わって「え? あれはどうなったの?」という部分が、いくつか残っていると思います。
 まずは、桜庭。彼女の正体(というか抱えている事情)が、結局最後まで明かされていません。それと、瑞樹が、蕾夏の同窓会以来見ているという夢。これも、結局は明かされていません。更には、2つほど、新たな問題定義というか伏線というか―――なんだかすっきりしないまま、残っているものがあると思います(1つは倖について、1つは佐野についてですが)。
 これらは、全て次作への伏線です。冒頭に述べたような事情により、1つの連載で収めるべき話が真っ二つの連載に分けられたが故に、こういう意味深な結果になってしまったのでした。最終話までには片付くだろう、と信じて読んでいた方々、ごめんなさい(汗)
 間違っても、更にその先に持ち越す、なんてことはございません。間違いなく、次作で片付きます。ですので、もう暫くお待ち下さいませ。

 さて、この先ですが。
 猫やんと舞、イズミについては、既に番外編をご用意してますので、「COMPLEX」後の彼らの姿がご覧いただけます。
 和臣と奈々美は…連載の中では、これにて完結です。何かの折に短編などで出すかもしれませんが、今後もあの調子で賑やかに生きていくことでしょう(笑)
 久保田と佳那子は、あの2人としてのストーリーは、これで終わり…かな? 何かの記念日にでも、結婚式の様子などお伝えできたらな、と思いますが、連載の中にはその類の話は出てこないと思います。ただ、瑞樹や蕾夏にとっての兄貴分、姉貴分ですので、次作に登場する可能性だけは残しておきましょう。

 で、肝心の瑞樹と蕾夏は。
 次作、「Infinity World 〜Step Beat Final〜」が、完結(一応)。2人の仕事の関係者(桜庭、瀬谷など)や家族、友達などが登場する一方、「Risky」以来ひたすら出番を待ってたあの人が帰って参ります。
 片付けなくてはならない問題を「COMPLEX」ですっきり片付け終わりましたので、これで2人の問題に集中できます。話数もまだ定まらない状態ですが、妥協せずに描いていきたいと思います。
 

 最後になりましたが。
 久保田&佳那子および和臣&奈々美ファンの皆様、長い間、本当にありがとうございました。瑞樹&蕾夏ファンの皆様、もう暫くお付き合い下さい。
 瑞樹と蕾夏が、どんな世界に行き着くのか―――最後まで見守っていただければ、幸いです。

2005.5.11 結城とも


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