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― afterwords ―

 

 「Step Beat × Risky」、最後までお付き合いいただきまして、ありがとうございました。

 この作品は、言わずと知れた、「Step Beat」のその後―――瑞樹と蕾夏がロンドンへ旅立ってから帰国するまでの、半年間のお話です。
 …疲れました。なにせ、目まぐるしく話が動く上に、お遊び的要素がほとんどないので、瑞樹達も緊張しっぱなしでしょうが、書いてる結城も気を張った状態のまんまですから(笑)

 2人の「これから」が見えだしたのは、「Step Beat」の「しせん」あたりをオフラインで書いていた頃です。
 実際には、本当の意味での最終回までの展開がほぼ見えたんですが、その中で、瑞樹と蕾夏が同じ1つの夢を見つけ、それを目指して別々の道を新たに歩き出す―――その過程が、ちょうどこの「Risky」に当たります。
 友人も家族もいない環境にいきなり2人きり放り込まれたら、関係はより密接になるだろうな。近くなり過ぎると、きっとお互いのことが見えなくなる部分もあるだろうな。それですれ違ったりぶつかったりすることは、2人の関係をもう1歩進めるいいチャンスになるんじゃないか―――そんな部分が、話の核のひとつ。そしてもうひとつが、互いが抱えてきたトラウマの一部を克服する部分でした。
 リミットは、半年。それは瑞樹達に課せられたタイム・リミットではありますが、それはそのまま、結城に課せられたタイム・リミットでもありました。

 ―――これだけのエピソード、半年間におさめるの?
 無理なんじゃないの。絶対描ききれないって。

 しかも、そのエピソードが、瑞樹と蕾夏だけじゃない。
 今回登場したもう1人の主人公・一宮 奏をめぐるエピソードが膨大にあったし、それに絡めて時田の過去も描かなくちゃいけないし、その過去は最終的には時田が瑞樹達をイギリスに呼んだ根本的な部分にも絡んでくる。あああ、頭痛い、って感じです。
 その上、時間的な縛りがあるだけでなく、「アルファベット順にタイトルつけるんだもん」というバカな宣言をしてしまったために、話数の縛りまであって。

 ―――これだけのエピソード、26話におさめるの?
 無理無理。絶対無理。

 もう、リタイア寸前です(笑)
 けれど、「Risky」は、一番最初にエンディング(「成田です」「藤井です」ですね)が決まってしまったお話ですし、奏が引き起こす“事件”を描くためにこそ、痛い思いしながら蕾夏の過去を「Step Beat」で生々しく描いておいたのだし、ポートレートを撮れないままに瑞樹がプロになるのは無理があるし、蕾夏がいつまでも瑞樹の心の支えだけに徹しているとも思えない。削れる要素はひとつもないぞ―――と覚悟を決め、あとはひたすら、エピソードをコツコツと積み重ねることに没頭しました。
  まぁ何とか、全エピソード収めることができましたが、その皺寄せを一身に受けた形の累とカレンの顛末については、番外編を書くことになると思います。

 今回は、瑞樹と蕾夏、そして奏の成長過程を丁寧に描くことが大事で、「Step Beat」や「そら」のように、強烈に伝えたいメッセージがあった訳ではありません。
 むしろ、ストーリーを楽しみたい。ハラハラドキドキできるような、タイトル通り「Risky」な話が書きたい、という思いが強かったです。ヒューマンドラマの色合いを持ったアクション映画を撮るような、そんな感じです。
 あえて一つ、描きたかったものを挙げるとしたら―――それは、「人間、誰しもが、危険な芽を心の中に隠し持っている」ということ。
 瑞樹と蕾夏、それに奏は勿論のこと、カレンも、そして大人な筈の時田やサラも、それぞれに危険な部分を隠し持っていて、その火種に、日々悩み、傷つき、時には選択を誤って人を大きく傷つけてしまったりしてます(累は…危険、というより、鈍感ですね。その鈍感さがカレンを傷つけている部分が多々あるような気が…)。
 でも、ことの大小はあれど、そんなことは、人間なら毎日のようにやってるんじゃないかな―――それが、取り返しのつかないミスになってしまうのは、瑞樹が物語りの中で言っていた通り、「案外、その場の流れとか運とか、そんなもので決まるに過ぎないのかもしれない」です。
 つまづいて、傷を負いながら、それぞれが新しい第一歩を踏み出せればいい。そんな思いで、エンディングまで突っ走り続けました。さて…上手く描けていたかは、少々不安…。

 ところで、タイトルの「Risky」。
 勿論、大きな意味合いでは、ロンドンに行っての大勝負そのものを意味してるんですが、それだけではありません。
 さて、一体、何個の「Risky」が、物語の中に隠されていたんでしょう? 結城もまだ、数えておりません(笑)
 ダブル・ミーニングという話はよく聞きますが、トリプルどころかもっとあるんじゃないかなぁ、これ…。あっちもこっちも、危険だらけ。

 まあ、そんなこんなで、数々の「Risky」を乗り越えた瑞樹と蕾夏は、半年前までSEだったのに、全然違う職業に就いてしまいました。連載するたびに「登場人物」欄の説明が違ってるってあたり、この2人、とてつもないです。
 そしていよいよ、第3作―――「成田です」「藤井です」の先にある、2人のお話に突入いたします。
 日本に戻るので、当然ながら、久保田達お馴染みのメンバーが復活します。ついでに、新キャラも登場します。「Risky」の面々も、何名かは登場します。
 …ますます、登場人物が増えますね。どこまで増殖していくんでしょう?(汗)
 

 最後になりましたが。
 シリーズ中、いろんな意味でちょっと異色なこのお話に、最後まで付き合ってくださった皆様。本当にありがとうございました。
 瑞樹と蕾夏の物語は、まだ暫く、続きます。この先の彼らのストーリーにも、またお付き合い下さい。

2004.8.4 結城とも


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